傾く人生 歌舞伎道
  • ポルシェの社用車だった!世界に一台だけ存在するターコイズカラーが美しい911

    ■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス

    1984年に当時のポルシェAG社長アシスタント用の社用車として製作されたポルシェ911 カレラ3.2が存在する。その一台は、他の911では見られないような、印象的なルックスにしあがっている。カスタム部門である、ポルシェ エクスクルーシブの先駆けともいえるものだ。

    この911は光によって印象が大きく変わる。ダークブルーのボディカラーに、アクセントカラーとして淡いターコイズブルーが加えられてフロントおり、バンパーからドアシル、リヤバンパー、Aピラーからレインガター、そして大型スポイラー、そしてフックスのアロイホイールにもターコイズ。

    そして、33年ぶりにこの一台に再会した人物がいた。かつて、ピーター・ヴェルナー・シュルツ社長のエグゼクティブアシスタントを務めていたティルマン・ブロドベックである。彼は1984年初頭から、1985年の夏までこの911のステアリングを握っていたのだ。

    ブロドベックは1970年にヴァイサッハでボディテスターとしてポルシェでのキャリアをスタートさせた。その後、開発センターで10年間を過ごし、エアロダイナミクスのエキスパートとしてカレラRS 2.7用のダックテールリヤスポイラーや、911のフロントスポイラーを設計した実績を持つ。911用フロントスポイラーは、当時ツーリングカーレースにおけるライバルだったフォード・カプリを打ち負かすために作られたものである。

    彼がエアロダイナミクスと同様に情熱を捧げていたのが“カスタマイズ”だった。彼は自身に与えられた社用車を、魅力的にアップデートしようと思いつき、このような独自のカスタムを加えたのだ。

    1978年、ポルシェはカスタマーからの特別なリクエストに応えることを目的とした「パーソナライゼーションプログラム」をスタートしているが、オーダーメイドの需要が世界的に高まったのは1986年。そして、ポルシェ エクスクルーシブに名称を変更し、現在はポルシェ エクスクルーシブ マニュファクチャーという部門で世界中からのワンオフオーダーを受け付けている。

    911ターボ 3.3をリースで購入

    1980年、ブロドベックは月額1000マルクまで利用できる社割を利用して911ターボ 3.3をリースで購入した。この時は非常に珍しかったパールホワイトメタリックというカラーをチョイスしている。そして、1984年に社用車が選べる立場になったとき、当時ポルシェのチーフデザイナーを務めていたアナトール・ラピーヌと何か特別なことをしたいと思いついた。

    こうして誕生した彼らのアイデアは、ダークブルーメタリックの911カレラにターコイズブルーを加えるというものだった。彼は懇意にしていたビーティッヒ・ハイムのペイントショップに依頼した。そのペイントショップは、ユニークな塗装のリクエストにも応えてくれることで有名だったためだ。

    「プライマーを塗ったあと、911を生産ラインから外して、パネルバンで塗装工場に運びました」と、ブロドベックは懐かしそうに話す。

    「まずはベースとなるダークブルーを塗って、次にハイライトのターコイズを仕上げました。塗装工場にはポルシェのデザイン部門でカラーや素材を専門としていた、エンジニアのレインホールド・シュライバーが来てくれて、ペインターにフリーハンドでどのように塗装すればいいのか、正確な指示を出してくれました」

    すべてのペイントが終了し、クリアコートが吹き付けられたあと、2日間塗装工場に置かれ、インテリアのカスタムを行うためファクトリーに戻された。

    ベルベット製カーペットはウンターリーシンゲンのマポテックス、インテリアとフロントラゲッジルームのレザートリムはヴュルツブルクのSCシェーファーが担当。サンバイザー、スイッチやボタン類もすべて、微妙な色調整が行われ、ターコイズブルーに統一された。

    「このターコイズカラーはどこに行っても目立つので、様々なところへ出かけていったものです。最初のドライブはフュッセンへの旅でした。国境の検問所に並んでいると、反対車線からやってくる人たちに“グッドラック!”と声をかけられたりしました」

    イタリアにも頻繁に訪れる

    彼はイタリアのスキーリゾート「パッソ・デッロ・ステルヴィオ」に頻繁に訪れていたが、「Bella macchina!(なんて素敵な車なんだ!)」とよく声をかけられたそうだ。「丘を降りる途中でブレーキがオーバーヒートしなかった唯一の車でしたよ」

    ブロドベックは歴代5名の社長のアシスタントを務め、ポルシェ・エクスクルーシブ責任者に就任した。そして、彼の相棒ともいえる社用車はスウェーデンへと渡り、1986年7月にスウェーデンで登録されている。走行距離はその時点で4万kmを刻んでいた。31年間、北欧にとどまり、ふたりのオーナーがそれぞれ6万kmずつ走らせている。

    そして、2017年にポルシェコレクターであるロニー・パンホルストがこの車を発見した。彼は同じくポルシェコレクターである友人のフランク・トロッシュに相談を投げかけた。実はトロッシュは17歳の時に、車に出会っていたのだ。

    トロッシュはこう話す。「私の父は工業用プラスチックをポルシェに納品する仕事をしていました。ティルマン・ブロドベック氏と友人だったのです。彼はよく、ニュルンベルクの私たちを訪れるために、あのターコイズポルシェをドライブしてきていたんですよ」。そして彼は、「この車を買うべきだ。夢のようなストーリーをもった、世界に一台の車だから」と声をかけた。

    入庫前にフライベルクのポルシェ・クラシックにおいて、フルレストアが行われた。すべてのフルードとフィルターの交換、車高やバランスの調整、ブレーキホースやその他のゴム製パーツの交換、電気系統のチェック、脆くなったシール類の交換など、必須の修復が施された。

    ポルシェ・エクスクルーシブのトップとして、ポルシェ・オブ・ジル・サンダーやスイスの著名な家具デザイナーのカルロ・ランパッツィのために鮮やかなオレンジ色の911ターボ・カブリオレを手がけたブロドベックは、「今見ても、このターコイズカラーは素晴らしいです」と言いながらしばらくの間ターコイズのシートに腰をかけていた。

    引用:octane.jp
    https://news.yahoo.co.jp/articles/9cf06f3386c1be03b8d2c9358bb43b281e23a3ee?page=1

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