傾く人生 歌舞伎道
  • 六月博多座大歌舞伎 公演案内

    ■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス

    解説とみどころ

    昼の部

    <廓三番叟>

    能楽の『式三番叟』の形式や詞章を踏まえた上で、艶やかな廓の趣向で魅せる舞踊です。本作に登場する傾城・新造・太鼓持は、『式三番叟』の翁・千歳・三番叟に見立てられています。
    舞台は吉原の廓の内、傾城(遊女)と新造(遊女見習い)の厳かな踊り始めから、ぐっとくだけた雰囲気の踊りへの移行、能面を入れる面箱の代わりに煙草盆を用いるなど、洒落た趣向に溢れます。太鼓持が登場してからは、廓における文のやり取りを見せるクドキ、傾城と太鼓持が手にした鈴を持っての踊り、最後は三人で舞い納めます。
    終始、洒落が効いた華やかな祝祭舞踊です。

    <人情噺文七元結>

    明治の落語家三遊亭円朝の人情噺を脚色した世話物で、江戸っ子たちの生活と心の機微を描いた人気作です。
    長屋に住む左官の長兵衛は、腕はいいのに博打好き、女房お兼との喧嘩が絶えません。ある日、愛娘のお久がいなくなったことで夫婦に口論が起きます。そのやり取りは笑いの連続ですが、同時に長屋暮らしの生活の苦しさも伺われます。
    実は、お久は自ら吉原に身を売ってお金を作っていたのでした。これで借金を返し、真面目に働いてほしい…そんな孝行娘の想いにすっかり目が覚めた長兵衛は、五十両を懐に家路を急ぎます。その途中出会ったのは、川に身を投げようとしている一人の男。店の売上金を無くしたお詫びに命を絶とうとしていたその男に対して長兵衛がとった行動とは…。
    笑いあり、涙ありの心温まる人情劇をお楽しみください。

    <太刀盗人>

    狂言の「長光(ながみつ)」を題材にした可笑しみあふれる松羽目物の舞踊です。
    京へやって来た田舎者の万兵衛は、土産を買おうと市場を見て回っています。その様子をうかがっていたのがすっぱ(スリ)の九郎兵衛。万兵衛が持つ黄金造りの太刀を盗もうとし、争いになります。そこへ土地の代官である目代がやって来てこの事態を裁くことに。目代の質問に万兵衛が答えるのを、九郎兵衛が横で盗み聞き、少し遅れて同じように応えていきますが、次第にすっぱであることが露見され…。
    田舎者らしい素朴な舞の万兵衛に対して、悪人ながらも愛嬌のある九郎兵衛の踊り。九郎兵衛が半間ずらしながら踊る技術と、両者の息のあった演技の妙もみどころです。笑いを誘う滑稽味のある一幕をご覧ください。

    夜の部

    <夏祭浪花鑑>

    大坂で実際に起こった事件を元に、浪花の俠客の生き様が描かれる義太夫狂言です。
    侠客の団七九郎兵衛は、喧嘩で人に怪我を負わせた罪で牢に入れられましたが、玉島兵太夫の執り成しで死罪を免れます。団七が釈放され、颯爽とした浴衣姿へ変わるところが最初のみどころ。続いて、大恩ある兵太夫の息子磯之丞と恋仲の傾城琴浦を巡って、一寸徳兵衛と団七は争いますが、団七の女房お梶の仲裁によって、二人は義兄弟の契りを結びます。
    一方、釣船三婦の家では磯之丞と琴浦が匿われています。徳兵衛の女房お辰が磯之丞を預かることになりますが、難色を示す三婦に対し、お辰はなんと自らを傷付けてその役を引き受けます。
    そんな中、団七の舅である三河屋義平次が、金に目がくらみ琴浦を連れ去ったことがわかります。義平次を追った団七は、揉み合う内に義平次を殺めてしまい…。
    大詰は“泥場”と呼ばれ、数ある歌舞伎の殺し場の中でも代表的な場面です。上方狂言屈指の名作をお楽しみください。

    <羽根の禿・うかれ坊主>

    『羽根の禿』は、吉原の見世先で、禿(上級の遊女に仕えながら修行する少女)が可愛らしく羽根をつくさまを描いた踊りです。俳優があどけない少女を表現する技巧とともに、背景の格子や門松をわざと大きく作る工夫などもみどころです。
    『うかれ坊主』は、常磐津の舞踊『願人坊主』を元に清元に改曲された作品です。願人坊主とは江戸時代に滑稽な芸を見せながら銭をもらって歩いた大道芸人のこと。チョボクレの節に乗せて身の上を語り、「まぜこぜ踊り」、「悪玉踊り」など軽快に踊ります。
    対照的な演目を一人の俳優で踊り分ける趣向をお楽しみください。

    <三人吉三巴白浪>

    「江戸演劇の大問屋」として知られる河竹黙阿弥の傑作のひとつです。「白浪」とは盗賊のこと。元は長編の作品で、「吉三」という同じ名を持つ三人の盗賊が出会う「大川端庚申塚の場」は単独で上演を重ねる名場面です。
    お嬢吉三は夜鷹のおとせに道案内を頼みますが、おとせから金を盗み、殺してしまいます。町娘を装っていたお嬢吉三は実は男性。「月も朧(おぼろ)に白魚の」から始まる台詞は「七五調」の名台詞です。その様子を見ていたお坊吉三が、お嬢吉三の悪事を咎める台詞の応酬も聴きどころ。やがて二人が斬り合うところに和尚吉三が割って入り…。
    幕末の退廃的な世相を反映した黙阿弥の代表作のひとつをお楽しみください。

    引用: 福岡の演劇専用劇場 博多座

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