傾く人生 歌舞伎道
  • 2020年5月、十三代目市川團十郎白猿の襲名披露を発表

    ■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス

    2020年5月、6月、7月歌舞伎座で、市川海老蔵が十三代目市川團十郎白猿を襲名することが発表されました。同時に、海老蔵長男の堀越勸玄が八代目市川新之助として初舞台を行います。

    「この度、私、十三代目市川團十郎白猿を襲名させていただく運びと相成りましてございます。歌舞伎界におきまして大きな名跡でございます。このうえは己の命の限り、懸命に歌舞伎に生きてまいりたい所存でございます」。歌舞伎座の緞帳が上がり、緋毛氈に勸玄とともに並んだ海老蔵は、しっかりと前を見据えて襲名への決意を語りました。

    團十郎という名跡の大きさ

    十二代目が平成25(2013)年2月3日に亡くなってから7年となる来年、再び團十郎の名跡が十三代目としてよみがえります。俳名として二代目團十郎から栢莚(はくえん)を名のり、その俳名を五代目が、人間に及ばない猿という俗信をふまえ、名人に及ばないという意で白猿に変えました。「私も父や祖父にまだまだ足もとにも及ばぬ、これからもっと精進していこうという気持ちも含め、白猿を俳名として名のることにしました」。

    團十郎という名跡について海老蔵は、「歌舞伎界にとりまして、たいへん重い名跡と理解しております。初代から父の十二代目まで、歌舞伎十八番、新歌舞伎十八番、荒事を中心にやっている家でございまして、いろいろなものを背負い、抱え、その時代に責任をもっていくことが必須になる。そのなかで自分が今できることを、少しずつやっていこうと思います」。父を見てはいたけれど、「なってみないとわからない、計り知れない重みがあるんだと思う」と、その名前の大きさに自ら気を引き締めていました。

    日本の伝統文化を継承する襲名披露

    代々続く團十郎として古典にとり組む一方で、「初代、二代目、七代目といったような、役者としてのみならず、人としてその時代に大きく影響を与えた人物も、團十郎家から出ているという部分も意識したい。古典に向き合って歌舞伎の道を歩んでいくとともに、新元号になるときの襲名で、この時代に生きていることを多くの方に感じていただけるような團十郎像を描いていきたい」と、現代の團十郎としての抱負も述べました。


    襲名披露にあたっては、「やはり市川團十郎という名跡でございますので、日本の伝統文化を継承することが第一の目標」として、古典演目を中心に歌舞伎十八番、新歌舞伎十八番ほか、「父、祖父が得意としていたもの、七代目、九代目が得意としていたものを継承するのをご披露する場になる」としました。

    海老蔵は昭和58(1983)年5月歌舞伎座『源氏物語』春宮で初お目見得、昭和60(1985)年4月から始まった十二代目團十郎襲名披露で、5月の『外郎売』貴甘坊で七代目市川新之助として初舞台、7歳4カ月でした。平成16(2004)年の十一代目海老蔵の襲名披露では、5月『暫』鎌倉権五郎景政、『伊勢音頭恋寝刃』福岡貢、『勧進帳』富樫左衛門、6月『春興鏡獅子』小姓弥生後に獅子の精、『助六由縁江戸桜』花川戸助六を勤めています。

    新團十郎とともに八代目新之助の初舞台

    海老蔵が35歳で父を失った翌月に生まれた勸玄が、十三代目團十郎襲名と同時に、八代目新之助を名のって初舞台を踏みます。この4月から小学生となる勸玄は、平成27(2015)年11月歌舞伎座『江戸花成田面影』で初お目見得以来、今月の新橋演舞場まですでに4度、本興行に出演、7歳での初舞台となります。團十郎襲名の公演で初舞台を踏むのは父と同じです。

    「この度、父も名のっておりました市川新之助の名跡を、八代目として相続いたします。どうぞ、よろしくお願いいたします」。はっきりと通る大きな声で挨拶した勸玄。「襲名を決める以前から彼は(自分を)新之助と思っているところがあり、本当は海老蔵を継ぎたかったみたい」との紹介にちょっと照れ笑い、子どもらしい可愛らしさがのぞきました。『玉兎』『幡随長兵衛』がやってみたいと、すでに父の背中を追って歩み出しています。

    海老蔵は、「歌舞伎の家に生まれたということでやっていますが、あとは、本人がどのような気持ちで歌舞伎というものに向き合っていくのか。これからさまざまなことがございまして、未熟な私がどの程度支えられるかわかりませんけれど、彼がどういうふうに逃げずに受け止めていくのか」。堂々と挨拶する姿に目を細め、遊ぶより稽古が好きという頼もしい息子に、「お稽古が好きというのは舞台が楽しいのかなと。舞台が好きなのは歌舞伎の家に生まれてよかったのではないかと感じます」。

    十三代目市川團十郎白猿襲名披露の興行は歌舞伎座5月、6月、7月のほか、11月博多座、2021年2月大阪松竹座、4月御園座、11月南座と続きます。また、2021年3月と9月は全国各地での巡演も行われます。八代目新之助の初舞台は、歌舞伎座の3カ月興行のなかで行われる予定です。


    ▲ 左より、八代目市川新之助として初舞台を行う堀越勸玄、十三代目市川團十郎白猿を襲名する市川海老蔵、迫本淳一松竹株式会社社長、安孫子正松竹株式会社副社長

    「十三代目團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」記者会見の模様は、ニコニコ動画「歌舞伎チャンネル」で、ダイジェスト版をご覧いただけます。

    引用:歌舞伎美人
    https://www.kabuki-bito.jp/news/5258/

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