Topics
海老蔵、十三代目市川團十郎白猿襲名披露に向けて
■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス
▲ 左より、堀越勸玄、市川海老蔵。背景のパネル写真は、上田義彦、操上和美、篠山紀信、半沢健により撮影されました
5月、6月、7月に歌舞伎座で行われる、市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露狂言、および、6月、7月に上演される、八代目市川新之助初舞台狂言が発表されました。
市川團十郎家ゆかりの狂言
襲名披露狂言に関して、「市川團十郎家として、継承しなくてはいけないこと、そして私がやりたいものが重なる、ということを目指しました。やはり歌舞伎十八番の内『勧進帳』、『助六由縁江戸桜』は外せないと思いましたし、やりたかった演目です。また、父から教わったことのなかで、『勧進帳』、『助六由縁江戸桜』、『暫』、『外郎売』がございまして、『外郎売』は倅に渡そうと。伝統文化を受け継いでいくという意味で、一人でやってもらうことを一つのテーマと思っています」。
初めて一人で『外郎売』に出演する勸玄が、「難しそうだなと思います」と素直な気持ちを表すと、海老蔵も「とても大変なことだと思います。出演したことのある演目でも、一人でやるとなると新たなハードルがありますし、早口言葉や見得、盛り上がるところに至るまでの過程で必要な作業を、今回彼に勉強してもらいたい。お客様も一緒に彼の成長を見守っていただきたいです」と語りました。
6月と7月に新之助として初舞台を踏むことについて、「楽しみです。がんばります!」と元気いっぱい、笑顔を見せた勸玄。一人で舞台に出ることに関しても、「寂しくないです。大丈夫!」。前向きにとり組む様子がうかがえます。そんな勸玄について、新之助を継ぐと決まってから「芝居に対する姿勢が、役者らしくなってきました。役者としてやってやるんだ、というような雰囲気が出ています」と海老蔵。勸玄が一人で挑む『外郎売』に期待がふくらみます。
弁慶と團十郎を襲名する私の姿が重なるように
襲名披露興行は、「五月大歌舞伎」の初日、5月3日(日・祝)から。「その日から名前が変わるだけで、私自身はそんなに変わらない。しかし、襲名披露発表を昨年の1月にさせていただいてから、月日が流れて、少しずつさまざまな準備や心構えをしておりますので、芸に向き合う姿勢というものが少しずつ変わってきているような気がします。お客様にもそのように思っていただけるように、努力しています」。
5月、7月に上演する『勧進帳』は、七代目市川團十郎が初演した演目。弁慶が、関守の富樫左衛門と押し問答の末、命がけで主君、義経を守る姿が描かれます。この弁慶の姿を例にとり、「難しい言葉が多いですが、現代の方々にも心が伝わるように演じたい。命がけで人を助けるために向き合う男の姿と、團十郎を襲名する私の姿が重なるようにできたら」と、襲名に向けて、改めて気を引き締めました。
今回の襲名披露狂言の一つ、『暫』は、十一代目海老蔵襲名披露でも勤めました。前回の襲名時とは、「全然心境が違う」と明かした海老蔵。「自分が父という立場になって、まったく変わってしまいました。そこを自分自身がどう乗り越えるか。自分自身も、そして子どもも大きな名跡を相続する、長丁場の襲名披露興行です。背伸びせずに、自分のできることを精一杯やりたい」と、真摯に語りました。
本日の会見でお披露目されたパネルにあしらわれていたのは、今回の襲名披露興行のために4人の写真家たちによって撮り下ろされた扮装写真。撮影は上田義彦(『助六由縁江戸桜』)、操上和美(『勧進帳』)、篠山紀信(『襲名披露口上』、『外郎売』)、半沢健(『口上 にらみ』)らで、会見の途中、金屏風の後ろからパネルが現われると、その迫力に会場からは歓声があがりました。
歌舞伎座で3ヶ月間続く襲名披露興行には、すべての部に團十郎を襲名する海老蔵が出演します。「しっかりやれることをやりたい」と語る海老蔵の様子から、歌舞伎界の大名跡、團十郎襲名披露興行に、今から期待が高まります。
十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行は歌舞伎座では、「五月大歌舞伎」、「六月大歌舞伎」、「七月大歌舞伎」にて行われ、そのうち、6月、7月には八代目市川新之助初舞台も行われます。その後、十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行として、11月博多座、2021年2月大阪松竹座、4月御園座、11月南座と続きます。また、2021年3月と9月は全国各地での巡業も行われる予定です。
▲ 左より、堀越勸玄、市川海老蔵、安孫子正松竹株式会社代表取締役副社長