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市川海老蔵の娘・麗禾ちゃんが“異例”の歌舞伎デビュー、背景にあった父の「手腕」
■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス
© 週刊女性PRIME 市川海老蔵(’19年、初春歌舞伎公演記者懇談会)
木村拓哉と工藤静香の長女・Cocomiの芸能界デビューで世間が沸いた3月19日。その翌日、同じくある大物の長女が“デビュー”することも明らかになった。
「キムタクの娘に比べると世間的にはインパクトは弱いですが、歌舞伎界の常識を覆すデビューです。お披露目は、歌舞伎座で5月から7月にかけて行われる、海老蔵の“市川團十郎白猿”襲名披露公演。市川宗家の待ちに待たれた襲名です。そんな歴史的行事において、“ぼたん”は女優として初舞台を踏むことになるのです」(スポーツ紙記者)
歌舞伎役者の市川海老蔵が十三代目・市川團十郎白猿を、同時に長男の勸玄(かんげん)が八代目・市川新之助を襲名する。その重要な3か月間のなか、7月公演の第二部で、長女の麗禾(れいか)が舞踏家市川ぼたんとして歌舞伎座デビューをする。
一部報道では、《男優のみの歌舞伎界において、約400年の歴史的にも極めて異例のこと》と書き立てるなど、思いのほかに大きなニュースなのである。
海老蔵の娘・麗禾がデビューの背景
かつて松本白鸚の長女で女優の松たか子は子役として出演するも、その後は歌舞伎の舞台に立つことはなかった。麗禾も同様に子役経験はあるのだが、今回は“市川ぼたん”として、ひとりの女優として歌舞伎座に立つのだ。
たしかに《異例》とするように、歌舞伎の世界では女形が活躍することから、“女人禁制”のイメージは強い。
娘のデビューは、破天荒役者・海老蔵による“禁忌”破りなのだろうか。自身も歌舞伎役者の家系に生まれた、歌舞伎評論家の喜熨斗(きのし)勝氏に聞くと、
「過去には、“新派”の水谷八重子さんであったり、新派と歌舞伎が共演する時代もありましたので、女優さんが歌舞伎座に一役として参加することは何回かありました。特に女性が舞台に立つことを禁じているのではなく、伝統として、女形が女性の役を務めるということになっているだけで、そこに約束や罰則があるということもありません」
歌舞伎の舞台に女優が立つことは、めずらしい話ではあるもののタブーというわけではないのだという。
「勸玄君にとっても、お姉ちゃんの芸や舞台を見て参考にしながら自分の芸を磨いていくことにもつながっていくと思います。海老蔵君と親子で、姉弟で同じ舞台に立つのは、すばらしいこと。新しい歌舞伎の形として、こういうところからどんどん変わっていくでしょうね。海老蔵君も歌舞伎界の先頭に立っているという意識があるのでしょう」(喜熨斗氏)
そう、海老蔵は「市川團十郎」として、歌舞伎界を背負う使命がある。
「近年の歌舞伎座公演は客離れが起き、このままでは衰退するとも言われています。“宗家”として危機を感じている海老蔵は近年、“縦”の関係以上に、同年代や若い世代と密にし、“横”の関係を強固にしています。
ここ数年で、片岡愛之助をはじめとした役者がテレビドラマや現代劇に積極的に出演するようになりましたが、これは視聴者にファンを作り、観客として歌舞伎を見にきてもらうため。若手全体で歌舞伎界を盛り返そうとしているのです」(歌舞伎関係者)
また、推し進めているのが“働き方改革”だ。
「1か月で25日間連続、約50公演が行われていましたが、“若い世代がついていけなくなる”と危惧し、年始公演の初日を遅らせたり、期間を22日に短縮するなどスケジュールを再考しています。そもそも継ぐ役者がいなければ、舞台がなりたちませんからね」(前出・歌舞伎関係者)
また、ぼたんの歌舞伎デビューに関しては、“改革”のほかに海老蔵のこんな思いもあるのだとか。
「親戚関係にある寺島しのぶさんは、海老蔵にとって年の離れた姉のような存在で、今も家族ぐるみの付き合い。歌舞伎役者になりたかったしのぶさんは“舞台に出たい”が口癖で、海老蔵もその話を聞かされていたのでしょう。彼女の夢をかなえるべく、’17年に歌舞伎公演デビューの場として、六本木歌舞伎『座頭市』を用意したのです。もちろん、女形は今後も伝統芸であり続けますが、海老蔵は時代に合わせて女性進出をおぜん立てしているのかもしれません」(前出・歌舞伎関係者)
喜熨斗氏もいずれ、“その時”は来ると話す。
「すぐにとはいきませんが、女優さんが当然のように歌舞伎の舞台に立つ日がいつかは来るのでしょう。そのためにもまずは、“歌舞伎の舞台に立てる女優さん”というのを育てなければいけません。実現には、やはり時間が必要だと思います」
海老蔵、もとい團十郎は名役者とともに、名プロデューサーになるようだ。
3月26日、自身のブログを更新し、新型コロナウイルスの拡大を考慮して襲名披露公演の延期を示唆した海老蔵。観客はもちろん、演者やスタッフの安全と健康を守るのも改革者の務めだ。