Topics
舞台袖で演目を支えてる「岡持ち」桶の香りが稽古場の香りと重なる。
■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス
お誂えに際して、当初、具体的なイメージが沸かなかった千之助丈。複数回重ねた打合せの中で、日ごろから自然との対話に心地よさを感じられていること、「自然を感じることのできる何か」を日常に取り入れたいと思われていることを知りました。そして、工房訪問をする中でたどり着いたのが、京桶。職人の手と鉋(かんな)で作られる「木の美しさ」に出会い、引き込まれました。
初めて訪れた桶屋の工房。製作する桶の径に合わせて準備された大小無数の鉋を見せていただきました。
役者が使う「おかもち」は板を張り合わせた箱状のものが大半です。しかし、工房で桶職人 近藤太一さんが手掛けた酒器、おひつ、手付き桶など、様々な「かたち」を拝見し、普段、舞台袖に置くおかもちを手掛けていただきたいという想いに至りました。
何度拝見しても不思議。近藤さんは鉋と手製の正直型(しょうじきがた)と、指先の感覚で木のピースから美しい楕円形をつくりだします。
京都の工芸は「洗練」の文字の如く、長い歴史の中で無駄を洗い流し、推敲を重ねて練り切られた絶妙な繊細さを醸し出すことが特徴のひとつ。桶も、いわゆる風呂桶のイメージとは程遠い、幅が狭く均一な木目、薄い木地、丁寧に編込まれたタガ、細部に凛とした気品ある美しさです。
桶製作では平面図で真上から見た際の大きさ、側面の深さを確かめていただき本番製作に進みます。
ロゴタイプを制作し、提灯の職人により、SENNOSUKEの名を入れました。
職人の流れるような手捌きによって完成する京桶の洗練された形。長く使用する実用的な道具として、半年以上かけて雨風にさらして鍛えた吉野杉を削り、さらに木目や色味が均一になるように厳選し、組み上げていきます。そうすることで、美しさに加え、狂いなく使っていただける桶となります。もちろん、修理ができるように、釘などは一切用いません。
永く、舞台袖で「道具」の役割を全うできるように。
誂え品
持ち手にさりげなく意匠を取入れました。台本、うちわ、化粧道具などを考慮した仕切りがおかもちとしての機能を果たします。
誂え人
片岡千之助(歌舞伎役者)
2000年 東京生まれ。祖父は人間国宝、片岡仁左衛門。2004年 歌舞伎座にて4歳で初舞台を踏む。幼稚園から大学まで青山学院に通い学業と歌舞伎を両立しながら、数々の舞台に出演する。2011年には仁左衛門と戦後初の祖父、孫での「連獅子」を実現させ、2012年、12歳から勉強会として自主公演「千之会」を主催するなど芸事への研鑽を積んでいる。2017年にはペニンシュラ・パリにて歌舞伎舞踊を披露、また、フランスの名門ブランド『カルティエ』腕時計パシャの国内アチーバーズに選ばれるなど国内だけに留まらず、海外での活躍の場も広げようとしている。
CRAFTSMAN
近藤太一(指物師)
1973年生。京都精華大学大学院美術研究科立体造形専攻修了。木工芸家中川清司(重要無形文化財保持者)に師事。2009年独立。2016年京指物伝統工芸士認定。
引用:Kiwakoto produced by A-STORY Inc.
https://kiwakoto.com/bespoke/sennosuke-kataoka/