傾く人生 歌舞伎道
  • 歌舞伎に学ぶ、男きものの粋

    【歌舞伎に学ぶ、男きものの粋】
    博多帯に脇差が魅せる、腰の線の美しさ—「心中天網島」(しんじゅうてんのあみじま)・「河庄」(かわしょう)での紙屋治兵衛(かみやじへえ)—
    三十男の紙屋の主人、治兵衛が遊女と心中…という、ともすれば俗っぽい話が「心中物の傑作」になった大きな要因はといえば、茶屋「河庄」の場での、治兵衛の姿の美しさ。
    黒地に純白の格子のきものに、翡翠(ひすい)のような色合いの博多帯をしっかりと結んでいる治兵衛。その帯に差している脇差(わきざし)のおかげで腰の線がいっそう美しく見えます。
    惜しげもなく絹糸がつかわれている博多織の帯は強くしなやかで、刀を日本差してもビクともしないことから、江戸時代には武士からことに愛された帯でした。
    現代においても博多帯、そして脇差の代わりに扇子を差すのが、男の粋な装いの仕上げかもしれません。


    「勧進帳(かんじんちょう)」という名の博多織の名古屋帯。女物ですが、写真からも博多織の強さ、しなやかさが伝わってきます。

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