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倉庫で歌舞伎を演る意義って?─中村獅童、「オフシアター歌舞伎」を直撃!
■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス
中村獅童の歌舞伎役者としての活動は、年を追うごとにダイナミックさを増している。近年は、絵本を原作とした『あらしのよるに』で動物だけが登場する歌舞伎に挑戦し、初音ミクとの共演ではデジタル表現と伝統芸能の融合を図った。そして今度はオフシアター歌舞伎と銘打ち、天王洲の倉庫と新宿・歌舞伎町のライブハウスで歌舞伎の興行を打つ。演目は、近松門左衛門作の『女殺油地獄』。なぜ、人形浄瑠璃の名作を東京のアンダーグラウンドなハコで上演するのか。その想いを本人に訊いた。
「歌舞伎って伝統と歴史がある美しくて健全な芸能だという見方だけになっていますよね。もちろんそれは素晴らしいけれど、でも江戸時代の歌舞伎は庶民のものだった。いま風に言うとストリートですよ。ファッション、音楽、舞踊、ニュースなど、様々なものを取り入れたのが歌舞伎ですから、よりストリートに近いアンダーグラウンドな場所で演じれば、歌舞伎の表現をリアルな方向に持っていけるんじゃないかと思ったんです」
その目は次の時代もしっかり見据える。
「オリンピックもあるし、これから海外からたくさんの方が東京に来ます。すると銀座では歌舞伎座でグランド歌舞伎をやっていて、歌舞伎町ではアングラ歌舞伎を観ることができる、と。いろんな場所でいろんなスタイルの歌舞伎をやっているのがいいかな、と」
演目に『女殺油地獄』を選んだのも、歌舞伎をストリートに引き戻すためだ。
「放蕩息子が親切にしてくれた人妻を殺す少年犯罪、殺人の話です。いろいろな人種の方がいらっしゃる新宿の歌舞伎町で、あえてダークで現代でもリアリティがある話をやるのも狙いのひとつです」
興味深いのは、ライブハウスにしろ倉庫にしろ、舞台がぐるりと観客に囲まれる配置になっていることだ。
「脚本と演出の赤堀(雅秋)さんの舞台を観に行くと、何気ない日常を描くのがすごくうまい。だから普段慣れ親しんでいる、正面からとは違う角度で観ることで、殺人の現場をのぞき見しているような、目撃してしまったような、そんなリアリティを持ってもらえると思っています」
話を聞きながら感じるのは中村獅童が歌舞伎を深く愛し、信頼していることだ。
「10代の頃からロックやファッションや演劇など、いろいろなことをやらせてもらいましたが、自分の魂のふるさとはやっぱり歌舞伎。歌舞伎がすごく格好よくて面白いものだと思っていて、たとえば衣装の色彩感覚は世界中のファッションデザイナーに大きな影響を与えています。スマホでなんでも情報を得られるいまだからこそ生の感動が大事だと思うし、このオフシアター歌舞伎は舞台と客席がすごく近いので、歌舞伎の醍醐味を味わっていただけると思います」
中村獅童は歌舞伎の伝統を踏まえた上で、現在進行形のストリートのカルチャーであることを証明しようとしている。最後に「いつの時代も歌舞伎が時代の最先端でありたい」ときっぱり言い切った。
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オフシアター歌舞伎
『女殺油地獄』
300年前の実話を基にした近松門左衛門の原作を、赤堀雅秋の脚本と演出でクールかつスタイリッシュな現代の歌舞伎に仕立てた。中村壱太郎や荒川良々といった多彩な共演陣が舞台を盛り上げる。
2019年5月11日(土)~17日(金)
天王洲寺田倉庫G1-5F
2019年5月22日(水)~29日(水)
歌舞伎町・新宿FACE
中村獅童
歌舞伎役者
1972年、初代中村獅童の長男として生まれる。祖父は三世中村時蔵。8歳で二代目中村獅童を名乗り、歌舞伎座にて初舞台。国境やジャンルを超えて新しい表現に挑む。
https://gqjapan.jp/culture/bma/20190518/street-kabuki
GQ JAPAN:引用
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