傾く人生 歌舞伎道
  • 團十郎襲名を控え心境 大いに海老蔵を生きた「王道であり異端であり続ける」

    ■傾く人生 歌舞伎道 銀座・成田屋のトピックス

    團十郎襲名を控え、抱負を語る市川海老蔵=東京・丸の内の東京会館で

    「十三代目市川團十郎白猿」襲名を控えた市川海老蔵(44)が披露公演(十一、十二月、東京・歌舞伎座)を前に報道各社の取材に応じ、海老蔵を名乗った十八年を「大いに海老蔵を生きた」と総括した。父の十二代目(一九四六〜二〇一三年)が亡くなって九年八カ月。江戸歌舞伎の大名跡を背負うことに気持ちの高ぶりは「ない」と言い、自身の「運命」と冷静に心境を語った。 (山岸利行)
    「二二年は(七代目による)『歌舞伎十八番』制定百九十年、祖父の十一代が團十郎になって六十年の節目。三、四、五、六、七代目の襲名披露公演はすべて十一月だった。私も團十郎の時間軸に乗せられているのかな」。コロナ禍により二年半の襲名延期で生じた巡り合わせも、素直に受け入れている様子だ。
    十三代目としての團十郎像について「正直、人間は変わらない。名前が変わるだけ」と気負いはない。しかし「だからといって、そこに甘えるつもりはない。初代は荒事を構築し、七代目は『歌舞伎十八番』(制定)など、革新的なことを忘れていない姿勢が團十郎家には必要。王道でありながら異端であり続けることが重要」と團十郎家の理想を語る。
    令和時代の團十郎として果たす役割もあるとみる。歴代政治家が、経済と文化が両輪となって発展していく大切さを指摘していたことを挙げ、「歌舞伎という文化に携わっているので文化を伸ばしていき、結果、経済も伸びていけば。それが團十郎としての一つのお役目」と言う。
    十一月は、「歌舞伎十八番」から「勧進帳」「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」を上演する。ともに成田屋(團十郎家の屋号)が特別大切にしている演目だ。「(『勧進帳』の)弁慶を初めてやる時、京都にいた父に細かく稽古をつけてもらった思い出がある。弁慶で一番大切なのは技芸でなく、義経を守る気持ち。これは今も変わっていない」と力を込める。
    〇四年に海老蔵を襲名して十八年。「普通の方々が経験したことのない経験、経験しなくてもいい経験、味わわなくてもいい苦しさなどを味わってきたと思う」と振り返る。
    これらは「人間としての厚みにつながる体験」とした上で「芸や芝居の良さももちろん大事だが、最終的に役者は人間。人間の魅力があってこそのお芝居。そういう意味では大いに海老蔵を生きたと思います」。そう言って胸を張った。

    ◆十三代目市川團十郎白猿襲名披露 11月吉例顔見世大歌舞伎

    ◇昼の部(午前11時開演)「祝成田櫓賑(いわうなりたこびきのにぎわい)」(中村梅玉、中村鴈治郎ら)、「外郎売(ういろううり)」(市川新之助、尾上菊五郎ら)、「勧進帳」(海老蔵改め團十郎ら)
    ◇夜の部(午後4時開演)「矢の根」(松本幸四郎ら)、口上(團十郎、新之助、松本白鸚(はくおう))、「助六由縁江戸桜」(團十郎、尾上菊之助、片岡仁左衛門ら)
    公演は11月7〜28日(14、21日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000489(予約受け付けは10月14日から)。

    引用: 東京新聞 TOKYO Web

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